ハンターマウンテン・スキー・エリア Hunter Mountain Ski Area |
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![]() 昼夜兼行の雪作り Photo by Hunter Mt. Ski Area |
アメリカ東部最大の都市ニューヨーク。その中心部であるマンハッタンから車で約2時間。ニューヨーク・スルー・ウェーと呼ばれる高速道路を州都オルバニー市(余談だが、ニューヨーク州の州都はニューヨーク市ではない。地理的に州の中央部にあるオルバニー市である)へ向かって駆け上がること約1時間半。高速道路を降りてからローカルの道を走ること約30分。それほど急峻な山の中というわけではないが、ある程度、昇り降りを繰り返した後に到着するスキー場である。
土曜日の朝7時にマンハッタンを出発し、2時間かかってスキー場に到着。すぐに準備をして9時から4時までのリフト営業時間を目一杯滑る。昼時はさすがに腹がペコペコになるが、レストランの長蛇の列にたじろぐ。結局、『時間がもったいない』とばかり、とにかくすぐに買える食い物を探し、やわら口に押し込む。1日の滑り終わったなら、ロッジ内のバーで渇いたのどにビールを流し込む輩を片目で見ながら、スキーの道具をそそくさと片づけてスキー場を出発。眠気と戦いながら高速道路を運転し、マンハッタン入り口の週末の渋滞をすり抜けてアパートへ到着。ここに来てやっと缶ビールの詮をプシュッといわせる・・・・。
これが筆者が過ごした、あるスキーシーズンの一こまである。とにかく体力さえあれば何とかやっていけた時代である。真冬といえど普通、マンハッタンの町中にはほとんど雪はない。スキーがしたければとにかくマンハッタンを脱出し、スキー場までたどり着かなければならない。北のバーモント州やニューハンプシャー州のスキー場へ車で行くには最低5時間。ちょっと遠い。かといってコロラド州やユタ州のスキー場へ行くには時間もさることながら金がかかる。ならば近場で何とかするしかない。
ニューヨーク近郊には結構、スキー場がある。1時間ほどでたどり着ける場所が幾つかある。しかし町に近すぎると規模が小さく、おもしろくない。しかも平野部に位置するため、昼間の気温が上がりすぎてせっかくの雪が融けてしまいやすい。もちろんスノーメイキング・システムの充実度の問題もある。結果、選ばれるのがこのハンター・マウンテンスキー場とういことになる。
このスキー場にはもう一つキャッチフレーズがある。『The Snowmaking Center of the World 』というものだ。スノーメイキングに関しては世界の中心、ということなのだが、スキー場側にいわせると『人工造雪発祥の地』ぐらいの意味あいを持たせたいらしい。
実際にスノーメイキングが最初に行われたのがどこのスキー場なのか筆者は定かではない。しかし大都市から2時間の位置で、スノーメイキング・マシーンが無ければスキー場などとは思いもよらない環境で、初心者からエキスパートまでそこそこ楽しめるトレイるを有す、ハンターマウンテンスキー場には『人工造雪の聖地』という言葉を贈りたい。
都市近郊型のスキー場であるため、宿泊施設そのほかの、いわゆるリゾートしての要件はほとんど完備していないスキー場である。そのためアメリカの主要なスキー雑誌が主宰するスキーリゾート・ランキングにはほぼ無縁のスキー場の一つだった。しかしスノーメイキングに関しては、他の有名スキー場を押さえて上位入賞、ときには堂々の1等賞を獲得したことすらあった。
十分な積雪に恵まれるロッキー山脈系のスキー場にはおよそ無縁な話だが、寒さが厳しく、降雪量が少ないアメリカ東部のスキー場、バーモント、ニューハンプシャー、メイン、ニューヨーク、ペンシルバニアといった州のスキー場においてはスノーメイキングのシステムがどれほど充実しているかが、スキー場の評価の分かれ目の一つであり、スキー場の存亡にも影響するといっても過言ではない。
その環境にあって、都市型スキー場のハンターマウンテンがこれほどのシステムを完備している点は高く評価されて良いだろう。
![]() 山道の急カーブ的コース Photo by Hunter Mt. Ski Area |
逆にスノーメイキング・システム稼働中に中途半端に気温が低い状況だと、べたべたの雪になってしまい、体中が樹氷のようになってしまう。場合によっては湿気を多分に含んだ雪の上を滑ると、スキーがストップしてしまう。なかなか難しいものである。
おもしろい構造をもったスキー場でもある。段々畑的コースとでも表現しようか。正面のコースを頂上からベースロッジに向かって滑ると前半は幾つかの細いコースに分かれる。この細いコースが段々畑のように山の斜面に並ぶのである。スキーヤーにしてみると横幅の狭い、ガードレールで保護されたやたらと滑りにくいコースである。例えるならば、ガードレールで崖っぷちが防御された細い山道を車で走っているようなものである。しかもアイスバーンである。コースから飛び出してしまったら『奈落の底?』、というわけではないが、スキーヤーによってはなかなかスリルを味わうことになる。
![]() スキー場正面 Photo by Hunter Mt. Ski Area |
治安の悪さも都会並みである。スキー場の駐車場に車を止めておいて、ドアの鍵穴をこじ開けられた、という経験はこのスキー場でのものが唯一。さらに悪い奴等がたくさんいるのだろうという予想がつくのが、リフト乗り場のチケットチェッカーの威圧するような態度と警官の監視。とにかく高圧的である。スキー場の職員であるチケットチェッカーと警官共に、『おまえらはどうせ悪さをしているんだろう』といわんばかりの横柄な態度。職務を果たす、自分たちの生活を守る、自分の町の会社(産業)の利益を守る、という主旨はよく理解できるのだが、筆者の我慢は一シーズンで尽きた。
リフトオペレーターの態度の悪さもアメリカのレジャー産業の中では最低の部類だった。スキー場側の社員研修の問題だと思う。リゾートと呼ばれるスキー場ではシーズン中のみ雇用する人員は地元はもとより全米各地から集まってくる。そのため就業前に徹底した社員研修が行われるのだが、このスキー場の場合、地元のおじさん、おばさんの雇用が多かったように思う。結果、社員の接客についてはリゾートスキー場とは天地雲泥の差が出てしまう。
スキーヤーに対するスキー場の対応にもそれは出る。たとえばリフトチケットの付け方。スキージャケットやスキーパンツのファスナー等に付けるのが原則である。グローブや取り外し可能なリングを媒体にしてジャケットに付けるのは禁止されている。つまり1枚のチケットを複数のスキーヤーで共用するのを防ぐためである。
この件に関してリフト券売場でなんらの説明がなされていなかった。そのため、なんら不正を働こうとしていないスキーヤーでも、知らずにそれに類した付け方をしてしまい、リフト乗り場でそれを見とがめられ、チケットの再発行を受けにわざわざ事務室まで行かされる羽目に陥ったスキーヤーをずいぶん見た。
それでなくても長い行列で時間を無駄にしているスキーヤーにとっては全く腹立たしいことであるし、気の毒でもあった。最初からきちんとチケットの装着の仕方について説明すればよいのだが、そういった配慮が欠けるのである。
こういった面が改良されるならば、大都市近郊にある優良スキー場として高い評価を得られるであろう。客としてやってくるスキーヤーのマナーの問題もあり、なかなか難しいとは思うが、願わくば良い方向へ向かって発展してほしいスキー場である。