ジャクソンホール・スキー・エリア
Jackson Hole Ski Area
Wyoming, USA
スキー場の内容と評価
トレイル構成
ベースロッジは1カ所ながら左右にそして大きな標高差にと大変に広いスキー場である。大別して2つのエリアに分けられる。トラムによってサポートされるゲレンデ左側のロンデイブー(この発音が難しい。筆者にはなぜこういういう発音になるのか理解できない)山頂側と5本のリフトによってサポートされるゲレンデ右側のエリアである。
トラムによってサポートされるエリアは基本的に山のてっぺんから麓の爪先まで上級者・エキスパート用コースで占められる。このトラムサイドもさらに山の中腹から山頂付近に向かって設置されている2本のクォッドリフトがサポートする上半分のボウルエリアとリフトのサポートが一切なく、一度降りてしまうとビレッジまで戻ってトラムに乗り直さなければ何もできない、いわば袋小路のエリアとに大別される。上から順にみると、頂上付近のロンデイブー・ボウルが最も標高が高く、続いて山頂に向かって左からシャイアン・ボウル、ララミー・ボウル、スタート地点が前二者よりやや高いテンスリープ・ボウルが並ぶ。ここまでが2本のリフトによってサポートされるエリアである。ここから下に永久閉鎖区域をはさんで左側にホバックのエリア、右にサウス・パス・トラバースと呼ばれる山の中腹を横切るコースから麓まで幾筋ものコースを有するエリアとが並ぶ。この二つのエリアに入り込んでしまった場合はトラムステーションのあるビレッジまで戻らざるを得なくなる。
山頂付近のリンデスヴァウス・ボウル。このボウルの上1/3は2本のリフトいずれもサポートしない。トラムは山頂に駅があるが、リフトは山の9合目付近までしかスキーヤーを連れていかないのである。つまり山頂で絶景を楽しむとか、山頂から滑り出したい、という場合は必ずトラムに乗らなければならない。しかし現実には1回トラムで上がってしまえば後は2本のリフトがサポートしてくれる山の9合目以下に迫力のあるコースが十二分にあるので、スキーヤーはこの設計の中途半端さにはあまり気にかけないようである。このロンデイブー・ボウル、ボウルとは命名されているが実際には左右に幅の広い、ワイド・オープンの1枚斜面である。トラムステーションからの滑り出しは『禿げ山の滑り出し』とでも言うところか。標高も高く、風が大変に強いため植物が育成しない場所である。その割に直射日光をもろに浴びるのでアイスバーンになりやすく、地吹雪が引き起こす雪だまり現象で非常に難しいコースになりやすい。ロンデイブー・ボウルの底辺の部分に大きな崖が左右に広がって永久閉鎖地区になっており、スキーヤーをとうせんぼする格好になっている。
第二段目の3つのボウル。それぞれのボウルの境界線になっている山の尾根伝いに2本のリフトがある。山頂に向かって左側、シャイアンとララミーの間がサブレット・リッジ・クォッド、右側、ララミーとテンスリープの間がサンダー・クォッドである。これら3つのボウルは左側の2つと右側のそれとでは形状がやや異なる。ボウルというのは『漏斗(じょうご)』を縦に半分に切ったような形状だが、シャイアンとララミーは縦に細長くした漏斗の形をしているし、テンスリープは側面積をもっと大幅に取った形をしている。シャイアン・ボウルはまんべんなく上級コースが展開してし、一部にグルームされた中級コースと上級コースを有している。崖や木の間を滑り抜けるツリースキーもモデレートというかジェントルなコースが多い。ところが隣のララミー・ボウルへ行くと様相が一変する。底からボウル全体を見上げると、左側のリフトの真下の部分には強烈なコースが2〜3本が難しさを競い合っている。斜面は急で、コースそのものが細く、しかもその細くなる原因が岩、木、崖であるからたまらない。サブレット・リッジ・クォッドがちょうどこれらのコースの真上を横切る形になるためリフトに乗るものをして「フーーーッ」と溜息をつかせたり、果敢に滑ってくるスキーヤーがいたりすると固唾をのんで見守る羽目になる。ララミー・ボウルの正面のコースと隣のサンダー・クォッドのある尾根からのコースは一応中級コースの指定になっている。一部に立入禁止区域がある他は比較的やさしいはずなのだが、なめてかかるとひどい目に遭う。筆者がサブレット・リッジ・クォッドに乗っていると突然「オーッ」という歓声があがった。上を見るとララミー・ボウルの正面のグルームされたコースの上の方から転倒したスキーヤーが両スキー、両ストックを吹っ飛ばしながら背中滑りで落ちてくるのである。たまたま湿雪をグルームした後に気温が下がりアイスバーンになったコースだからたまらない。一切のコントロールを失い、何百メートルほど滑りというかずり落ちただろうか。結局リフト乗り場付近まで一直線である。やっと止まったと思っても、スキーとストックは『遥かかなたの上の方』というやつである。これがかわいい女の子であれば白馬ならぬスキーに乗ったかっこいいお兄さんが駆けつけるだろうが、相手が野郎では・・・・結果は神のみぞ知るである。3つめのテンスリープ・ボウルはやや複雑。スタート地点が前の2つのボウルよりもやや高い上にトラム下は難攻不落の崖のために立入禁止区域になっている。『立入禁止区域をグルッとまわってさあ安心』などと思うのもつかの間、黄色地にビックリマークの警告標識がいきなり目の前にあらわれる。ふっと下を見ると強烈なチュート、つまり崖に挟まれた細ーい急斜面である。その名をエキスパート・チュートExpert Chuteという。これがまた網を張ったように数本のコースがその名前で並んでいるのである。やれやれ抜けたわ、というのもつかの間、続いてペイントブラッシュという同様の、いやもっと長いコースがあんぐりと口を開けて待っておりました。サンダー・クォッドのリフトはサブレット・リッジ・クォッドと違い、エキスパート用のチュートや崖のコースのスタート地点の上を通るため、それらのコースが実際にどんな風になっているかを見通すことが出来ない。そのため『どんな風になっているのかな』などと単なる好奇心から入り込んで後悔しないように。前述のペイントブラッシュの隣のタワー・スリー・チュートなどはリフト真下の中級コースから間違って入ってしまわないようにオレンジのネットが中級コースとの境目沿い全面に張られ、スタート地点のみにゲートが設けてあるほどである。このテンスリープ・ボウルが山の右側のコースに接続するのだが、テンスリープ・ボウルの開始線付近からが山の右側のコースのさらに上の部分、スキー境界線の外の部分、ヘッドウォールとキャスパー・ボウルへの登坂入り口となる。スキー境界線外であるためスキーパトロール外区域だが、スキーパトロールが『雪崩等の危険性が低い』とみなしたときに限り登坂が許可される。オープン、クローズの標識が出されるとはいえ境界線外であることに変わりはなく、滑走はスキーヤー本人の責任においてのみなされることになる。要するに筆者としてははるばるやってきた日本人にはあまりおすすめしないと言うことである。
トラム・カバーエリアの下半分。非常に横幅の広いエリアが立入禁止区域をはさんで並んでいる。左側は北、中、南の3つに区分されたホバックエリア。進入口はシャイアン・ボウルを大きく迂回したリンデスヴァウス・トレイルの途中からのみである。一方のサブレット・リッジからトラム・ラインまでのトレイルマップ上の5本のコースはサブレット・リッジ・クォッドリフト乗り場から始まるサウス・パス・トラバースと呼ばれる中級コースからのれんを垂らしたように並んでいる。なぜこのエリアにリフトがないのか。実は雪崩多発地区なのである。その頻発性や規模には相当の被害が予想できるらしく、『さわらぬ神にたたりなし』を決め込んでいるのが実状のようである。コース自体はオープンスペースと群生する木々、谷間や崖、チュートが複雑に組み合わさってなかなかのものなのだが、それでなくともスキー場全体が南向きの『日当たり良好』なのに、標高が低いためそれに輪をかけて雪温が上がってしまい、夜は夜で冷え込みまくり、運良くあいていたとしてもクラストやスノークッキー、中途半端に踏み荒らされた雪面状態プラスアイスバーンという非常に滑りづらいコンディションになることが多い。『君子危うきに近寄らず』でトラム下の中級コースへ迂回するのが賢いかも知れない。もちろん雪質等のコンディション次第だが。
トラムがサポートする標高差の激しい山頂側のコースに対して初級者用専門の1本のリフトを含む5本のリフトでサポートされる右側のエリアは標高差もそれほどではなく、主に中級コースが中心に展開し、ビレッジを基点とした下の方に初級コースが集まり、あちらこちらに上級コースが散在する状況になっている。ベースロッジを背にし、トラムの山頂駅を左手に見るように立つと、自分の立っているところからリフトが2本づつVの字を書くように左右に広がっていく。左辺がクリスタル・スプリングダブルとキャスパー・ボウル・トリプル、右辺がティワナ・ダブルとアプレ・ブー・ダブルである。左辺は初級者用の非常になだらかなコースが始まりだが、そのコースをサポートするイーグル・ネスト・ダブルリフトの降り場付近から急激な勢いで急斜面を駆け上がり始める。クリスタル・ダブルはその急斜面を登り切ったところが降り場となる。リフトを降りて右へ行っても左へ行っても迂回コースで中級コースだがリフト下だけはかなり迫力のあるブラックダイアモンドである。降り場から今一つ、正面に階段が設置されており、すぐ上のキャスパー・レストランへ通じる階段である。ただし階段の付近にスキーを放置しないでかならずスキー・ストックをもって階段を上るように注意書きがあることをつけ加えておく。クリスタル・ダブルから乗り継いでさらに上へ上がるのがキャスパー・ボウル・トリプルである。標高の割には各コースは斜度が安定しており意外にこのスキー場で最も滑り心地の良いコース群のある場所かも知れない。ナサターののレースコースがあるのもこのエリアである。一方右辺のティワナ・ダブルとアプリ・ヴァウス・ダブル。標高が上がるというよりは奥行きが長い、といった傾向のコース。そのため特にティワナ・ダブルはリフト全体が初級コースと合致するのでスキースクールや初級者の利用が多く、そのため運行速度がゆっくり目のため大変混み合う。アプレ・ブー・ダブルは中級コースのみのサポートとなり斜度も部分的にややきついところもあるがグルームも頻繁になされ概して滑りやすいコースが多い。ただし所々に散在するブラックダイアモンドのコースには注意が必要。筆者が目の当たりにしたのはアシュレー・リッジでの悲劇(?)。このコース前半は中級コースなのだが途中の迂回路を過ぎるとブラックダイアモンドになる。それも周囲の中級コースから比べるとコース幅が三分の一から四分の一になるし、もちろん急だし、コブだらけだし、という三重苦を背負ったコースになってしまうのである。横滑り、ステップダウン、お尻滑り・・・・友人同士、冗談を言いながら悪戦苦闘しているうちはいいが顔つきが険しくなり始めるとちょっと悲惨である。コース内容の確認は慎重に。
レベル毎の楽しみ方
a)初級/Beginner
残念ながら滑走可能なコースはかなり限定されてしまう。ベースロッジを基点ににする2本のリフトがサポートするエリアのみである。ただし96−97年に新設された新型高速リフトのおかげで混雑が解消され量的に滑走を楽しめるようになった。
b)中級/Intermidiate
少々の急斜面ならガッツと根性でなんとかするというスキーヤーはトラムを使う手もある。ただしコースはかなり限られることを念頭に置くこと。頂上付近に自信がなければトラムは避け、クリスタル、キャスパーの2本のリフトを乗り継いでキャスパーボウル下の中級コースを中心に楽しむ。ここからは頂上付近をサポートするサンダーリフトへのアクセスも可能だし、そのエリアの中級斜面をトライすることもできる。
c)上級/Advanced&Expert
とにかく天候が許す限り、トラムで頂上へ駆け上がるのが第一。基本的にトラムは混雑が激しいため、頂上に到達後は頂上付近をサポートする2本の4人乗りリフトを使って楽しむのが時間を無駄にしない方法。このエリアの全コースを制覇するだけで並大抵ではない体力と時間、そして何よりも勇気が必要である。
スキー場評価
とにかく険しい山である。正直言ってこの山だけであれば初級スキーヤーにはあまりお薦めできないし、中級スキーヤーも気の弱い人にはちょっとしんどいかもしれない。スキー場に限らず、山へ行けば一度は頂上へ上ってみたいものである。山頂からの景色の素晴らしさを味わってみたいものである。ところがこのスキー場は、初級スキーヤーがトラムをつかって山頂へ向かうには滑り降りるコースが難しすぎ、気の弱い中級スキーヤーには山頂付近のボウルの荒々しさに足がすくんでしまいそうな場所なのである。初級コースの少なさが気になるが大自然の中で純粋にスキーを楽しもうとするとそんな気持ちも失せてしまう。荒々しいスキー場であることを記憶にとどめてほしい。
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