キリントン・スキー・エリア

Killington Ski Area
Vermont, USA

Introduction / スキー場の特徴


斬新なデザインが雪に映えるゴンドラ
 ときは5月。メモリアルデーウィークエンドと呼ばれる5月最後の週の三連休。高速道路の周囲は一面の新緑。運転手はTシャツ姿。車の屋根にはスキーラックとスキー。周囲のドライバーが「何で今頃!」という驚きを隠せないでいる。
自然保護やナショナルパークとの契約上の制限などで、4月上旬に営業を終了してしまうスキー場の多いコロラドやユタのスキー場に対し、バーモント州のスキー場は春遅くまで滑ることが出来る。
パウダースノーでは一歩も二歩もロッキー山脈系のスキー場に譲ってしまうアメリカ東部のスキー場だが、ことシーズンの長さに関しては決してひけをとらない。

 キリントンの春スキーを語るには3月からのキリントンを語らなければならない。
町中では春の足音が聞かれる頃だが、キリントンでも寒さがゆるみ、天候にも恵まれることが多く、素晴らしいスキーが出来る時期である。そしてこの時期、日当たりが悪く、まだ気温も低い北向きの斜面では春本番に備えて昼夜兼行で雪つくりが行われる。


晴天の日の人工猛吹雪

雪の地ならし

春のモーグル
 特に6月中旬までの営業を目指すスーパースターと呼ばれるコースは人工造雪機から吹き出される雪のために、まるで真冬の大嵐、大吹雪といった様相となる。(写真左)

 4月に入り南向きの斜面の雪質が悪くなり始める頃、このスーパースターコースの積雪量がリフトの椅子の高さを超えるほどになると、いよいよ春スキーの準備完了となる。本来はコブ斜面の調整のために使用されるグルーミング用の圧雪者が、アンバランスに積もった雪を平均化するための作業をする。(写真中央)つまり本来は低気温・少積雪という東部のスキー場の弱点を補うための施設であった人工造雪機能を逆に『より長いスキーシーズン』をつくり出すための手段として活用しているのである。

5月、山にも遅い春がやってくる頃、スーパースターコースでは周囲の新緑を横目で見ながら、Tシャツに半ズボンといういでたちで(よく言われるビキニ姿の女性スキーヤーというのは希で、筆者も1度しかお目にかかったことがない。この時期は雪質がザラメ質になるため、ビキニ姿で転倒でもしようものなら体中キズだらけになってしまう)日に日に悪くなる雪質をものともせずにスキーを楽しむ人たちで賑わう。(写真右)


 時期的な状況をかいつまんで言うと、4月中はまずまずの雪質で滑ることが出来る。トレイルもピークシーズンの60〜70%ほどがオープンしている。
5月にはいると次第にクローズされるコースが増えてくるし、オープンしているコースも湿気を含んだ重たい雪質、グラニュー糖のようなザラメ雪となり、楽しむためにはそれなりの技量が必要になってくる。目安としては上級、あるいはかなり強い滑りをする中級スキーヤーであれば問題はない。
何年か前に、駐在で日本からきたばかりの日本人家族が5月の末にまだスキーが出来ると聞いて喜び勇んできたのはいいが、幼稚園児と小学生の子供さんが雪質の悪さとコースの難しさに動けなくなってしまい、スキーをかついで降りるのを助けたことがある。小さな子供さんがいるご家族は5月以降のスキーはさけた方が無難のようである。


初級者の登竜門スノーシェッド・エリア
 そしてその年の天候にもよるが、平均して5月中旬以降になるとオープンしているコースはスーパー・スターのみとなり、次第にコース中程に雪融けの為に茶色の部分が広がってくる。この頃になると露出した石や土の上を滑ってもよいように使い古したスキーを春用スキーと称して準備している、用意周到なスキー気違い達の独壇場となる。そのうちに『露出した石や土の上を滑ってもよいように』などという上品な段階を通りすぎ、最初はスキーを脱いで歩いて渡っていたコース途中の雪無し部分を「エイ、ヤッ」とばかり、スキーをはいたまま滑り渡るようになるのである。つまり雪があろうが無かろうが関係無く、とにかく強行に滑ってしまうである。

ただしこれはなかなか大変である。89年来、筆者もその仲間入りしている。ただしその入会料が非常に高いものについてしまった。
雪が融けて芝、泥そして泥水が混ざった20メートルほどの区間に勢いをつけて突入したのはいいが、雪のあるところまであと2〜3メートルというところで股裂き状態に陥ってしまい、目の前にたまっていた水たまりのなかに頭からダイビングする羽目になったのである。まわりはもちろんリフトに乗っているスキーヤー達から大歓声が上がったのは言うまでもない。おかげで買ったばかりのロシニョールの真っ白のトレーナーがしみだらけになってしまった。高い入会料というか授業料を支払ったものである。

 そこまでバカに徹することもなく、1日中スキーを楽しむもよし、疲れたらデッキチェアーでひなたぼっこをするもよし。昼になったらピクニック気分でビール片手にバーベキューに舌づつみをうち、食後の腹ごなしはバレーボール。一汗かいたところで、マウンテンバイクで雪の無くなった初級者用コースを縦横無尽に走り回る。春スキーの楽しみはつきない。


世界初?芸術の香高きゴンドラ
その良さをさんざん並べ立てたが、もちろん春スキーだけがキリントンの売り物ではない。その広大なスキー場面積、長いシーズン期間、常にスキーヤーのために新しいものを導入する企業姿勢等、そこにはスキーヤーの根強い人気がある。

 東部最大を誇るスキー場敷地面積と網の目のように設定された100以上のトレイルは初めてのスキーヤーをして迷子にさせてしまうほどの内容をもつ。
5つのピークからなるスキー場は、ほぼその総てに初級・中級・上級の各コースを並存させている。つまりいろんなレベルのスキーヤーが1つのリフトを使って自分なりのコースを楽しむことが出来るのである。
これから乗ろうとするリフトの真下のコースが目をまわしそうな急斜面でも心配する必要はない。必ず迂回する初級者・中級者コースが設定されているのである。トレイル標識に注意して従えば実に快適なスキーが保証される。トレイル設計者の苦労がうかがわれる。

 さらに初級者・中級者にとっては長いコースに挑戦できるのも楽しみの一つだろう。頂上からゴンドラベースまではのんびり滑ると2時間近くかかる場合もある。前述のとおり大規模な人工造雪機能は春遅くまでのスキーシーズンのみならず秋早くからのスキー場開きも保証する。オープンしているコースの数や雪のコンディションを別にすれば10月中旬のスキー場開きは全米でも屈指である。


各コースの案内表示板
 スキーヤーの目にはなかなか触れずらいが、人工造雪機能の拡充に伴う水の供給問題に関して、そして自然保護の目的も含めて汚水の再利用・リサイクル設備の設置は高い評価を受けている。世界最初の暖房付ゴンドラを導入したのもキリントンである。暖房のみならずそれまでの決まりきった単一デザインの外装ではなく、極めて大胆なコンテンポラリー・アートの図柄を施したキャビンは世のスキーヤー達に「あっ」、と言わせたものだった。
常に業界をリードするスキー場。それがキリントンである。


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