カークウッド・スキー・エリア

Kirkwood Ski Area
California, USA

Introduction / スキー場の特徴

 アメリカ中のスキー場を滑り歩いているためか、冬の足音が聞こえてくるとよくこんな質問を受ける。「休暇でスキーに行こうと思うんだけどどこがいいかな?」。
ところがこの手の質問には簡単には答えられない場合が多い。答えを言う前に筆者の方が逆にたくさんの質問する羽目になる。「何月に行くの?」「誰と行くの?子供さんの年齢は?・・・」「予算は?」「どんなタイプのスキー場がいいの?」「一緒にいく彼女はどのくらい滑れるの?」「食事にはうるさい方?」「アフタースキーのアクティビティーはどのくらい必要?」「寒さには強いの?」・・・・といった相当の状況確認を経た上でなければおいそれと「このスキー場がいいと思うよ」とは答えられないものである。
ところがこんな質問を受けたことがある。「思いっきり滑りたいんだけど、どこか穴場を教えて!」という質問である。そのとき何のためらいもなくフッと口に出た言葉が「カリフォルニアのカークウッドスキー場だね」というものだった。


ベースから遥か彼方の山頂を望む
 『穴場』。辞書を引くと『釣などで、気がつかずについ見過ごす、よい場所。更に広く、一般に知られていない、よいところ。』(西尾実・他編、岩波国語辞典より)とある。
試しに逆説的に、そして消去方で考えてみる。穴場にならないスキー場。見過ごすことのない良いスキー場。要するに有名どころとなる。これはスキーヤーによってあるいはそのスキーヤーが住んでいる場所によって様々であろう。北アメリカの規模の大きなところに限って言えば、アメリカ西海岸に住むスキーヤーならばマンモス、スコー・バレー、ヘブンリー・バレー、同じく東海岸に住むスキーヤーならばマウント・スノー、キリントン、シュガーブッシュ、日本に住んでいるスキーヤーにとってはウィスラー・ブラッコム、ヴェイル、アスペン、スノーバードといった所だろうか。さて、これら以外のスキー場で見過ごしがちな良いスキー場でなおかつ知られていないスキー場である。


リフト下の振り子沢
 更にもう一ひねりしてみよう。『見過ごしがちな』スキー場、すなわち有名スキー場がそばにあるというのはいかがであろうか。『知られていない』スキー場、つまり行きずらいスキー場、交通の便が悪いスキー場というのはどんなものだろう。この2つのふるいにかけるとコロラド、ユタのスキー場はまずほとんど落選のようである。ちょっと行きづらい場所にある大きなスキー場はいくつかあるが、そのスキー場自体がそのエリアで有名スキー場となってしまい、『有名スキー場がそばにある』ことで陰に隠れる術をもたない。

 そこで登場するのがカリフォルニア州とネバダ州の境にあるレイクタホの南方に位置する、カークウッドスキー場なのである。
最寄りの玄関口になるネバダ州のリノ市から車で約2時間。鉄道はおろか定時の路線バスすらない。行くとすればレンタカーを借りるなど自前で車を調達しなければならない。
しかもレイクタホ方面から入った場合、カーソン峠という難所が途中にあるためアクセスが余り良くない。よくないどころか雪が降り続いたり、吹雪ともなればこの峠は閉鎖され、文字どおり陸の孤島と化してしまう。まさに山の中に外界との連絡を遮断するように孤立して存在するスキー場である。
位置的にも内容的にもまさに穴場と呼ぶにふさわしいスキー場であろう。


Photo by Kirkwood
 そして何もない山の中に宿泊施設が立ち並んでいるだけのため、レストランなどのダイニング施設には限りがある。ディスコ、バーと言ったアフタースキー用の娯楽施設も申し訳程度の内容。はっきり言って3日目には飽きる。
その結果何が起こったか。いわゆる『通』しか来ないのである。『スキーお宅』の競演とでも書くべきか。そしてその影響はたとえ週末であったとしてもリフトラインに如実に現れる。
いわゆるレイクタホ周辺の大スキー場に比べてなんとすいていることか。しかも常連スキーヤーは言う。「本当に真剣に滑ったら、思う存分に滑ったらナイトライフ何ぞというものは必要ないでしょう」と。

 このスキー場の最大の魅力はトレイルのバラエティーさである。それも1本1本のトレイルが複数の特徴を兼ね備えている、あるいは組み合わせてもっているという多様性である。そしてそれがスキーやにとっては実に楽しいのである。
リフトを降りて「用意、スタート」といってからリフト乗り場に到着するまでのあいだに急斜度があったり、林の中があったり、岩場があったり、ハーフ・パイプがあったり、崖があったり、極端に狭い通路があったり・・・・、と言う具合なのである。


断崖絶壁の間にコースが見える?
 エキスパート・オンリーの文字がドクロの絵(!!!)と共にかかれた警告標識を横目にダブル・ブラック・ダイアモンドコースへ出る。ものすごいセッピがスタート地点から迫り出している。「エイッ」と思いきりよく飛び降りると40度以上の急斜度が続く。斜度が甘くなってきたなと思うと今度はハーフ・パイプの様なコースに突入する。右へ左へと振り子のように戯れる。これがある1本のトレイルの経過説明である。
ここまであれやこれやと組合わさっているのも珍しい。特に崖、巨大な岩の間をすり抜けるコース、馬の背と谷間のコースはこのスキー場の売り物である。もちろん全体の50パーセントを占める中級コースにも美しくグルームされたコースばかりではなく変化に富んだコースが含まれる。これらが実にコンパクトに(だからといって決して狭いわけではない)敷地内に並んでいる。

 豊かな積雪量はスノーメイキングシステムの導入の必要性を感じさせない。感じさせないどころか普通のスキー場だったら前述の岩や崖は冠雪せず、遠くから眺めるだけの飾りにすぎないものが、降雪量に恵まれたこのスキー場ではスキーヤーの身近な遊び場になる。
自然降雪だけで雪質は別にして確実に5月末まで滑れるのも素晴しい。スキーヤーにとってはまさに豊穰なる雪の大地である。リフト施設がやや旧式のものが多いが余り気にならないのも不思議である。むしろゲレンデにいるスキーヤーの数が制限される格好になり好ましいかもしれない、などともっともらしいことを口にしたりする。硬派スキーヤーのためのスキー場といえるかもしれない。


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