ルーンマウンテン・スキー・エリア

Loon Mountain Ski Area
New Hampshire, USA

Introduction / スキー場の特徴


本物の蒸気機関車
 デタッチャブル・ハイ・スピード・クォッド・リフトの乗り場の付近の屋根がやたらと長い。どこからともなく汽笛が鳴った。するとその屋根の向こう側から一筋の白い煙があがった。機関車があるわけでわけでもないのに何だろうと思いながらスキーをかついで歩いていると、なんと本当に蒸気機関車なのである。
かつて日本でデゴイチなどの愛称で呼び慣らわされた大型のものではない。しかし3回りくらい小さな、それもれっきとした蒸気機関車である。駐車場をはさんで2つのベース、ウエスト・ベイスン・ベース・エリアとオクタゴン・ベース・エリアを結び、スキーヤーの輸送に当たっている。スキー場内のシャトルの役割を果たしている。考えたものである。子供にとってはスキー以外のものすごく大きな楽しみになるだろう。
話が逆になったが冒頭で述べたリフト乗り場の屋根の話。ウエスト・ベイスン・ベース・エリアにあるカンカマガス・リフト(なにせ舌をかみそうな名前である。)の乗り場である。スキーヤーが列を作る場所に回廊のように屋根が続いている。


ロッジ前の初心者用特設コース
 スキー場がスキーヤーのために行う工夫について考えてみる。この場合の工夫とは『スキーヤーが安心して、快適にそして楽しくスキーやスノーボードが出来る環境をつくる』と言ってよいだろう。そしてそれはスキー・スノーボードの為のトレイル・コースそのものとパーキングからロッカー・昼食・ロッジに至るまでのスキー周辺の設備が対象となる。
  そう考えるとルーン・マウンテンは工夫に満ちたスキー場である。リフト乗り場の屋根、蒸気機関車だけではない。スキー場の様々な所にきめ細かい工夫・配慮がなされている。


中級コースに設けられたスキーヤー専用コース
 『安心して』という点をみてみる。初心者スキーヤー(この場合、生まれて初めてスキーをする大人や子供)のコース内容と配置が見事である。完全に独立した初心者スキーヤー専用のエリアはロープトウによってサポートされ、スキースクールの集合場所を基点としていので、生まれて初めてスキーに挑戦するスキーヤーは不慣れなスキーブーツを履き、持ち慣れないスキーを持って長々と歩く必要が無い。

 わざわざ土地を造成して造り上げたようにもみえるエリアは完璧なまでのグルームはもちろんのこと、たっぷりとした横幅、極めて一定の緩やかな斜度は初心者、特に生まれて初めてスキーを試みるスキーヤーには何よりの練習場である。

 目の前にはベースロッジもある。寒さにがまんできなくなったり、疲れたりしたらほんの何十歩か歩けば暖かなロッジのなかに入りすわって休むことも出来るし、暖かいコーヒーやホット・チョコレートにありつけるし、場合によってはまるで罪人のように戒めをつけられたかと思いたくなるようなスキー靴を脱いで足を休めることが出来るという安心感は初心者スキーヤーには大変心強いはずである。


特設されたデコボコ障害コース

 この変化に富んだ障害物はそのまま『楽しく』という面にもつながる。ベースロッジに近い中級者コースに設けられた人為的につくられた大コブ、小コブ、変形コブ、階段コブのアドベンチャー区画も同様である。所によっては迷路を歩かされているようにくるくるまわらなければならない。子供だけでなく大人のスキーヤーも楽しんでいた。決して大規模とはいえないスキー場ながらこれだけの創意工夫、そしてメインテナンスの努力をなしていれば内容的には大規模スキー場に決してひけをとるものではない。

 スキー場によっては初心者クラスをやや離れた特設会場までシャトルで運ぶところもあるが、寒さの厳しい真冬にはちょっと辛いものがある。特にクリスマスから1月一杯続くニューイングランド地方の冬の寒さには大変に厳しい。筆者もレッスン中に手足の凍えに我慢できなくなった女性の受講者に泣かれてしまい往生した経験がある。少なくともこの特設会場でレッスンをする限りそんな心配は無用である。
初心者を卒業したばかりの初級者の為の短いリフトと独立したコースはそのすぐ隣。コース際が塀で囲ってあり、コースのきわの認識が容易である。中級以上のスキーヤーでわざわざこのリフトを使って初級者コースに入り込もうなどという物好きもいないから、無謀なスキーヤーとの接触事故の心配もない。


靴入れ用の棚
 『快適に』をみてみよう。スノーボードを許可しているスキー場でスキーヤーオンリーのコースの設定には驚いた。筆者は初めて目にしたように思う。一部のコースではあるが、中級コースの一定区間にスノーボード侵入禁止の札が出ている。まだ足の強くない中級者への配慮だろうか。
逆にスキーヤーの立ち入りが禁止されているのがスノーボードパークである。そしてこの中身の濃いスノーボードパークは大変に立派である。スキー場によってはスノーボードパークとはうたってあるが、あるいはコースの表示はあるが、実際には名ばかりのとても貧弱な環境であったり、メインテナンスが不十分な為にみるも無残な姿のパークもままある。しかしここはメインテナンスも行き届き、ジャンプ台などの障害物の数も多い。スノーボーダーはこのスキー場以外で滑るのが嫌いなってしまうのではなかろうか、と思うほどである。

 ベースロッジに入れば明るく吹き抜け方式をとって開放感のある設計はともかく、コインロッカーの隣に設置されたたくさんの棚にも注目したい。この棚のおかげでカフェテリアのテーブルの下にはカバンや靴が置きっぱなしにされることが無く、足元に不自由な思いをすることなく食事や休憩をとることが出来る。

  工夫に満ちたスキー場である。そしてその工夫が決してお座なりではなく、キチンと徹底して行われているのがこのスキー場の特徴である。95ー96シーズンに筆者が滑り歩いた北米大陸の43ヵ所のスキー場のなかでスキーヤー・スノーボーダーのために最も質の高い環境設定・整備を行っているスキー場としてこのルーンスキー場を挙げたい。経営や運営に対する姿勢を高く評価したい。


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