サンモリッツ・スキー・エリア

St.Moritz Ski Area
Grisons, Switzerland

Introduction / スキー場の特徴


スキー場全景 Photo by St. Moritz SKi Area
 『トップ・オブ・ザ・ワールド(Top of the World)』。これがこのスキー場に冠せられた副題である。「世界の頂点とは?」、「何をしてこのスキー場に世界最高を名乗らせるのか」などと書くと、週刊誌によくある徹底解明記事に似てしまいそうだがあえてトライしてみたい。

 世界の頂点を名乗らせる要素を書き出してみよう。
・山の高さ
・名門スキー場としての伝統
・景観の素晴らしさ
・アクティビティーの豊富さ
・お客のハイソサエティーさ
・宿泊施設の素晴らしさ
・値段の高さ
・スキースロープの素晴らしさ
・レストラン・バーの素晴らしさ
・スキー場の設備の良さ
こんな所であろうか。いざ検証。

 サンモリッツの町の標高が1856メートル。山の中腹に当たり、登山電車の終着点であるコルヴィグリア・ロッジが2488メートル、トップが3057メートルである。ちなみに共通リフト券で滑れる湖対岸のコルヴァティシュはトップが3451メートルである。富士山の標高3776メートルを考えれば十二分な『山の高さ』ではなかろうか。


馬そりならぬ雪上馬車
 『名門スキー場としての伝統』をいうならば過去2回の冬季オリンピックの開催地としての歴史がそれを雄弁に物語る。1998年、第18回大会をわが日本の長野市が開催したのは記憶に新しい。その18回の大会開催のうち2回以上開催地としての任を負ったスキー場が実は3カ所ある。32年と80年のアメリカ・レイクプラシッド、64年と76年のオーストリア・インスブルックそして28年と48年のスイス・サンモリッツである。回数のみならず、開催地として選ばれた時期が2回とも第2時世界大戦前の第2回大会と第4回大会であることにも注目したい。第1回大会開催地をフランスのシャモニーに譲ったとはいえ、サンモリッツの古くからの実力には他の追随を許さぬものがあったようである。ちなみにアジア初の冬季大会は72年の札幌大会である。

 いまさら『景観の素晴らしさ』を云々するのは失礼であろうか。ヨーロッパ・アルプスの一翼を担うこの地の景観が素晴らしからぬはずがない。
目にしみわたる空の青さ、そびえ立ちそしてそそり立つ雄大な山並み、雪の白さを際だたせるような針葉樹の濃い緑、冬の湖水はともすると凍結し敷き詰められし雪の白さがこれまた湖岸の緑とよく調和する。そこここにはまるで絵に描いたような美しい建物が並ぶ。まさにスイスならではの景観がそこには広がる。

 そもそもスキー場にあるアクティビティーとは何か。ウィンタースポーツのはずである。その原点がここにはある。すなわち過去2回のオリンピックに使用した施設の一般への開放であり、スポーツトレーニングセンターとしての活用である。
アルペンスキーはもちろんのこと、クロスカントリースキー、ジャンプ、ボブスレー、リュージュ、アイススケート、そして新しいところではカーリングである。このうち純ジャンプは余人にはあまり縁のないものであるがボブスレー・リュージュが幅広く一般に普及している状況は日本、アメリカではあまり見られないことである。近隣のスキー場へ行くために乗っていたバスの車窓から見えた、道路沿いにつくられた氷の特設コースには度肝を抜かされた。
もちろんウィンタースポーツだけではない。馬そり、乗馬、テニス、ヘルス・スパ、泥・エステ、ハング・グライディング、パラ・グライディング、美術館等々、枚挙のいとまがない。これらはこのスキー場の客層とも関連するのだが、スキー以外のアクティビティーも豊富にそろっているのである。



ファッショナブル?超高級?・・・
サンンモリッツスタイル
Photo from Gazette Magazine by Swass Air
 サンモリッツという町の客層について語る前に写真をご覧頂きたい。スイス航空の機内誌からの一こまである。注釈には「これぞまさにサンモリッツのイメージ」と書かれている。往路、機内でこれを目にしたときは吹き出しものだったが、復路、目にしたときには大いに納得したものである。
われらクラブメンバーの証言から。
「町中のホテルなんかとても入る勇気がないわ。だって出てくる人、入っていく人みんな素晴らしい毛皮のコートを着ているんだもの。まるで毛皮のコートを着てない人は入っちゃいけないみたいなのよね!」これを聞いたメンバー全員、「うんうん」とうなずく。
われらクラブメンバーの体験から。
例会中のパーティーとして山の中腹のコルヴィグリア・ロッジの高級レストラン(?)で昼食会を開いたときのことである。お隣のテーブルに座った若いスキーヤー達が誰か連れを待っていた。そのうちの一人が入り口に向かって片手を揚げて合図した動作につられてそちらを向いた我々の目が点々に・・・。
ミンクの帽子、くるぶしまである長ーい、これまたミンクのオーバーをさっそうと着こなした、一見若そうな(失礼!女性に言わせると若さ・美貌を保つには金と時間を惜しまぬ事であるそうな)女性がさっそうと歩いて来るではないか。
テーブルまで来てサッと脱いだ毛皮のコートの下は見事なシルクのブラウスとロングスカート(雪道を歩かなければならないためさすがにロングドレスではなかった!)。そのままカクテルパーティーくらいは十分通用するいでたちなのである。ところがここでその淑女をエスコートするのは多キーシード姿の男性ではなく、先にテーブルについていたスキーウェア姿の野郎共。女性のお姿にも組み合わせのアンバランスにも驚かされた。
つまりこれがサンモリッツの基本的な姿なのである。お金持ちの来るリゾート。若者はスキーやその他のウィンター・アクティビティーに精を出し、スキーをしない淑女、おじいちゃん・おばあちゃんは自分に向いたアクティビティーを楽しみつつ、昼食は皆が一カ所にうちそろって優雅に会食をし、夜は夜でディナー、エンターテイメントを楽しむのである。そこに登場するのが前述のヘルス・スパや泥エステなのである。
やっぱりすごいスキーリゾートなんだね、とはメンバー全員の一致した感想でした。


スキー場の登山電車
 そんなすごい人たちの泊まるホテルである。「毛皮を着ていなければ入れない」と感じさせるほど重々しい外観、素晴らしい内装は圧巻である。なにやら毒気に当てられたような気がしないでもない。
さりとて筆者のような『銭無しスキーヤー』が滞在できたのも事実。町中にあるリッツ・カールトンのような世界的に名の通った有名ホテル以外にも、いわゆる民宿的な経営をしてくれているありがたい宿泊施設もある。

 ここまできた以上、値段についてはいわずもがな、である。しかし繰り返すが町の雰囲気は高額であっても、探せば我ら庶民の味方は必ずいるものである。

 『スキースロープの素晴らしさ』は評価の分かれるところである。基本的に雪さえあれば全山これスロープ、である。どこを滑っても良いのだが、あまりにも全体像が大きすぎるため、いきおいグルーミングによってならされたコースを滑る格好なる。その各コースが総体的にジェントルなものが多い。大きなパラレルやジャイアント・スラロームあるいはクルージング系の滑りを楽しむスキーヤーにはもってこいなのだが、80年代以降流行しているモーグル・スキーやエキストリーム・スキーといった系統のスキーヤーにはちょっと物足りない斜面構成である。ワールドスキークラブ第4回例会参加者の評価もそのあたりで分かれたようである。


世界最も高い(所の)すし?
 レストランやバー。ゲレンデ内にある各ロッジの食事はカフェテリア形式、レストラン形式とも水準以上のものと思う。位置的なものがあり、ドイツ的なるものがやや色濃い気がする。これは近くにどこの国と国境を接しているかによって左右されるスイスのスキー場の宿命であろう。しかし2400メートルの山の中腹のレストランで寿司が供されているのには驚いた。ケーキを飾るがごとくのショーケースに寿司や巻物が並べられている姿は、食においても世界に冠たろうとする姿勢の表れであろうか。職人さんは大阪ベイヒルトンからの派遣だそうである。

 伝統にあぐらをかくことなく常に施設・設備の更新や充実を図ろうとする姿は高く評価して良いだろう。ケーブルカーやロープーウェーといった精密重工業機械はスイスのお家芸である。リフトなどよりもロープーウェーの方が普通に感じさせるところはさすがである。同様に斜めの登山電車の設置も目を引いた。もっとも真っ白なゲレンデににょきっと出現するレールの違和感についてはいろいろと意見のあるところのようであるが・・・

 長い伝統、豊かな経験の上に、揺るぎない力をもつ客層をかかえる一大スキーリゾート、それがサンモリッツである。


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