サンバレー・スキー・エリア

Sun Valley Ski Area
Idaho, USA

Intorduction / スキー場の特徴


ホテルのカウンターのような
スキースクールデスク


大理石のトイレ?


化粧室の入り口


グランドピアノ付のラウンジ


ゆったりとしたバー

 ルネサンスという言葉がある。いきなりこんな言葉が出てきたのでギョッとされた向きもあろうがこのスキー場を語るに不可欠な言葉なのでしばしおつきあい願いたい。
『古代ギリシャ・ローマ時代に栄えた文化が停滞を余儀なくされた中世の暗黒時代を終わり、新たなる発展を開始した文芸復興をルネサンスと呼ぶ』。何十年か前に読んだ歴史の教科書風にかくとこうなるだろうか。この歴史用語であるルネサンスという言葉がアメリカのスキー業界で喧伝され、サンバレー・ルネサンスという言葉まで出現するに至ったのである。

 1936年に創設されたサンバレー・スキーリゾートは古代ギリシャに活躍した哲学者や科学者と同じく、時代のなかでその才能と先見性を高く評価され活躍した人物によってその場所を選ばれ、設立された。
その名はアヴェレル・ハリマン。1900年代初頭、まだ鉄道が時代の最先端をいく運送手段だったころ、ユニオンパシフィック鉄道会社のオーナーであり経営者であった彼が、アメリカに最高のそして最初のスキーリゾートをつくろうと白羽の矢を立てたのがこのアイダホ州の片田舎であった。
経済人としてのみならず、駐ロシア大使、ニューヨーク州知事、国務次官補を歴任した政治家でもあったハリマンがなぜそのような発想を抱いたのか、そしてなぜこの地を選んだのか、筆者には定かではい。しかし第2次世界大戦中、戦後の負傷兵療養所としての施設解放の時期を除き、サンバレスキー場はリゾートしての地位を着実に固めていった。

 しかし1960年代に業績不振のユニオンパシフィックがスキー場を売却したのを機に暗黒時代に突入する。経済的な不振がサンバレースキー場自体の設備投資に足かせになった。さらに西のカリフォルニアではスコーバレーが冬季オリンピックを開催、南のコロラドではヴェイル、アスペンといった新興のスキーリゾートが着実にその内容を高め、地位を向上させていたのである。
旅行客の鉄道離れ、鉄道の路線縮小・撤退がサンバレーをして辺鄙な場所にあるスキー場、行きにくいスキー場の代名詞とならしめ、スキーリゾートとしての相対的な地位は下落する一方となった。経営環境の悪化は薄暗いベースロッジ、いつまでもトリプル化、ハイスピード化されないリフトに如実に現われた。

 次の転機は1977年にやってきた。オイルショックの危機を抜け出たシンクレア石油のオーナーであるイェール・ホールディングがサンバレースキー場を買収したのである。
ホールディングは買収したのみならず、このスキー場を再び最高のスキーリゾートして復活させる目論見さえもっていたのである。以降、15年に渡り、ハイスピード・クォッドの設置、世界最大と言われた全自動人工造雪機システムの導入、3つのベースロッジの設置・・・と、次々にスキー場への設備投資を行い、改良を加えていったのだった。

 そして1995年のスキーシーズン、アメリカ最大のスキー雑誌、スキーマガジンの主催するスキーリゾート・ランキングにおいて堂々のゴールドメダルを獲得するに至るのである。

 このオイルショック後のシンクレア石油による買収と設備投資そして成功というくだり、貿易で栄えたイタリア諸都市がイスラムの興隆や大航海時代の到来でその栄華を失い、文化・文芸・芸術への傾倒を強めた結果、ルネサンスを興すに至った経緯と非常によく似ているというのは考えすぎであろうか。
(首を傾げられる向きもあろうかと思う。そもそもルネサンスとはイタリア諸都市が繁栄したが故に興ったのではなく、繁栄に陰りが見え始め自己反省・宗教的帰依を原因とした文化への援助・パトロナイズに端を発するというのが正しく、歴史の教科書で端折った書かれ方では正しく説明されたいないことが多い。)


特徴的な谷間状コースの合流
 設備投資そのものも決して他のスキー場の二番煎じではない。画期的とまでいわれたコンピューター制御による人工造雪機システムはそれまでの人間の手に頼っていた作業の常識を覆えした。

新たに建てられたベースロッジはそれまでの常識を一変させ、これが本当にスキー場の施設なのか、見るものをして、利用するものをしてまるで高級ホテルのようだ、と言わしめる内容のものだった。
筆者も最初は信じられなかった。

ホテルの受け付けカウンターと見間違えるほど豪華なスキースクールデスク。
高級ナイトクラブかと勘違いするグランドピアノつきのゆったりとしたバーラウンジ。
公衆電話1台1台の前に置かれたふかふかのソファー。
極め付けは大理石で磨かれた化粧室(早い話がトイレなのだがトイレという言葉を使うのもはばかられる)。

 どれをとってもとてもスキー場のベースロッジの施設とは思えない内容である。スキー業界における常識を変えていこう、新たなるものを作り出そうという意気込みがそこにはある。


谷間のリフト集合点

 パトロナイズと言う言葉を考えるのであればあるインタビューでのホールディングの答えが印象的である。
記者:『これ程多額の投資をされましたが、失礼ながら高齢のあなたが利益を回収出来るとお考えですか?』
ホールディング:『私の存命中に資本や利益の回収が出来るとは全く思っておりません。私の死後、ここにいる娘が私の意志を引き継ぎ、何らかのものを回収してくれるでしょう。』
このスケールの大きさには全く頭が下がる思いである。時代の先を読んだハリマンの事業の開始とそれを引き継ぎ、復興させたホールディングの社会・経済への貢献。まさにサンバレー・ルネサンスと呼ぶにふさわしい現象である。。


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