テルアライド・スキー・エリア

Telluride Ski Area
Colorado, USA

Introduction / スキー場の特徴


トレイルマップ表紙より
Courtesy Telluride Ski & Golf Company
 いわゆるスキーリゾート、たとえばコロラド州やユタ州にある有名スキー場はもう滑り終わった、というスキーヤーの方へ。あるいはネバダ州とカリフォルニア州にまたがるレイクタホ周辺のスキー場のように、ともするとギャンブルやナイトショウなどのアフタースキーの方がにぎやか過ぎる派手な場所はいやだ、というスキーヤーの方へおすすめなのがコロラド州南西部に位置するテルアライドスキー場である。

 まず所在地が変わっている。コロラド州のいわゆる名の通った大スキー場は、州を丁度南北に分けるようにデンバーから西へ向かうインターステイツ70号線沿いか、そこからわずかに入り込んだ所にあるものが多い。
既に大きく発展したスキー場はそういった交通の便の良さを十分に生かしてきた。ブリッケンリッジ、キーストーン、カッパーマウンテン、ヴェイル、ビーバークリークが典型であろうか。やや奥まったところでアスペン、スノーマスなどがある。
しかしこのテルアライドスキー場はそういった大スキー場とはいささか趣を異にし、場所的に少々辺鄙な所に位置する。地図で見ると南のニューメキシコ州あるいは西のユタ州との州境に近い。
しかもロッキー山脈の険しさに阻まれ、この辺には大きな町はなく、主要幹線道路といえども大変険しいものが多い。所によっては昭和40年代前半の北海道の山道をほうふつとさせる風景にも出くわした。


オーコワッ!

オーコワッ!オーコワッ!


険しい道路は景勝道路でもある
 特に南のニューメキシコからの道は圧巻だった。2台の乗用車がギリギリすれ違うことの出来る非常に細い、一部簡易舗装の道。一方は見上げてしまう崖、反対側は目もくらみそうな谷底にもかかわらずガードレールすらない急カーブ。
走っていて目の前に巨大な岩が出現したかと思うと、その底の部分をただくりぬいただけのぎざぎざの岩肌がむき出しになったトンネル。アメリカにもまだこんな道路が現存するのか、と驚きあきれる思いをする内に、峠を登るに従って道の両サイドはまるで富山県の立山を思い出させるような雪の壁。
しまいには「こんなところで天候が急変して吹雪にあったらどうしよう。ひょとすると遭難してしまうだろうか」などと雪国生まれの雪国育ちで、冬にはいささか自信のあった筆者が非常に心細い思いをする羽目になった。

 テルアライドの村あるいはスキー場へ向かう最後のアクセスロードともいうべき道路もまた狭く、カーブが多く、急勾配で、険しい。雪さえなければまだしも、ドンッと雪が降った日にはまるで動きがとれなくなる可能性もある。除雪車ですら難儀をしそうな感じである。

 さて長々と道路の険しい状況を書き立てたのは読者に恐れをなさせるためではない。このテルアライドという村とスキー場がいかに都会からあるいは都会風なものからかけ離れているかを感じとって欲しかったのである。
マスコミュニケーションの発達に伴うめざましい都市化、生活の近代化・物量化によって少々の田舎スキー場でも近代的なホテル、レストラン、ディスコ、場所によってはカジノなどの派手な娯楽施設が所狭しとならび、客集めに必死の競争が展開されるのが常である。何もそういった商行為が悪いと言うわけではない。


村への急降下の滑り
Courtesy Telluride
Ski & Golf Company
 しかし先年、日本のあるスキー場で当たり前になっている現象を小耳に挟むに及んでいささか考えさせれる所があった。『重たくてかさばるスキーの道具一式の他に、というよりもスキーの道具以上にスキー場のディスコへ行くための、それも日替わりで着るために男性ならスーツ何着かとぴかぴかの革靴が、女性ならば同じくドレスにハイヒールがぎっしりとスーツケースに・・・・』というのである。
ディスコへ行くなというのではない。お洒落をするな、というのでもない。でも何のために山の中まで出かけたのですか、と問いたいのである。普段の生活の中でそこらじゅうにころがっている珍しくもなんともないものを、ひょっとしたらもう飽きがきてしまっているようなものを(失礼)なぜ、そんなにまで必死になって持ち込まなければならないのですか、ということなのである。

 スキー旅行から帰ってみれば話として出てくるのはディスコの話ばかり、というのではあまりにも寂しい。スキーをしてこその、スキーを楽しんでこそのスキー場なのである。
このテルアライドとて近代的なホテルもあればバーも、お土産物屋もある。しかしスキー場全体にあるいは村全体に非常に質素な、あるいは英語で言うシンプルな雰囲気、生活様式、町並み、娯楽環境が残っている。
そしてなによりも『はじめにスキー場ありき』なのである。極端な話、明るい内はスキー、暗くなったらベッドに入る、という感じか。たまにはこんな雰囲気でのスキー休暇も楽しいのではなかろうか。(11/25/95)


タウンへ下降するゴンドラ
Courtesy Telluride Ski & Golf Company
追記
 97年のシーズンに再訪した。やはりテルアライドといえども観光地化、大型化、近代化の波は避け得ないようである。
町並みそのものというか見た目は、町全体が景勝保存地区として建物に対して厳しい法規制を適用しているためあまり変わらなかったが、建物の中に入っている店舗などの内容には大きな変化が見られたように思う。
それ以上にマウンテン・ビレッジ側の発展・拡大には目を見張るものがあった。かつては大型リゾートホテルがぽつんと、あるいはひっそりとたたずんでいた所に、おしゃれなビルが立ち並び、周囲にはコンドミニアム群が所狭しとひしめき始めている。

 スキー場への道路を走っていてもすれ違うエアポートシャトルの数の増え方に驚きを禁じ得なかった。
運輸・宿泊・飲食・娯楽・・・様々な面で経済的効果が地元にもたらす恩恵を考えれば拡大・発展を一概に否定するわけにはいかない。タウン入り口付近にできた大変立派な学校の建物をみればうなずけるところである。
しかし一方で筆者のみならず地元に在住されるか方たちの間にも、このまま都市化が進むことにあるいは急激すぎる変化に危惧の念が広がっているようである。
『最も好ましい形での発展を考えて、我々とスキー場側が話し合っていこうと思っている』という、バーで同席した地元の住民の言葉が印象的だった。


険しい渓谷の終着点
 よりよい環境をめざして導入されたゴンドラ・システムがそれを象徴しているかもしれない。パーキング、マウンテン・ビレッジ、スキーコース上の山頂駅とタウンを結ぶ無料ゴンドラである。従来利用されてきたシャトルバスに変わって運行されるものでスキーヤー・観光客のみならず地元住民の日常生活にも利用される。
シャトルバスに比べて時間単位あたりの運搬人数が飛躍的にのびたほか、騒音・排ガス対策にも大きな威力を発揮している。
特に排ガスについては、テルアライドのタウンが渓谷の最も奥まったところに位置し、三方を急峻な崖に取り囲まれているため空気がよどみやすく排ガス対策には急を要するものがあった。

 その他ゴンドラの鉄塔については両サイドの木立の高さを超えないようにできる限り低く抑えて美観の保全にもつとめている。
一般的に見られるリフトの代わりのゴンドラ、あるいは険しさのために道路を確保できないが為のゴンドラと違い、シャトルバスの代替機能としてのゴンドラというのは北アメリカ大陸のスキー場では最初の試みである。(4/8/97)


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