ウィスラーマウンテン・スキー・エリア Whistler Mountain Ski Area |
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共通した大きな特徴は山の頂上とベースロッジの間の標高差の大きさである。次の表を見ていただきたい。
| スキー場名 | 州 | 山頂標高 (Feet) | ベース標高 (Feet) | 標高差 (Feet) | 最長コース (Miles) |
| ハンターマウンテン | NY | 3200 | 1600 | 1600 | 2.0 |
| キリントン | VT | 4220 | 1060 | 3160 | 10.2 |
| ヴェイル | CO | 11250 | 8150 | 3100 | 4.0 |
| スノーバード | UT | 11000 | 7900 | 3100 | 3.3 |
| ジャクソンホール | WY | 10450 | 6300 | 4139 | 7.0 |
| スコーバレー | CA | 8900 | 6200 | 2700 | 3.0 |
| ブラックコム | BC | 7494 | 2140 | 5280 | 5.0 |
| ウィスラー | BC | 7140 | 2214 | 5006 | 5.0 |
北アメリカ大陸を東から西までをカバーするように各州から1つずつ登場してもらった。山頂の標高だけをとるならばいわゆるコロラドロッキーと呼ばれるワイオミング、コロラド、ユタの各州にあるスキー場がダントツである。ところがこのあたりのスキー場はベースロッジの標高も同様に高く、山頂とベースの間の標高差(Vertical Drop)はそれほど大きなものにはならない。ところがウィスラー・ブラックコムの2つスキー場になると山頂の標高はそれほどでもないが、標高差には他の追随を許さないものがある。筆者が滑ったおりはいずれも曇りの日が多かったのだが、ウィスラー側のゴンドラに乗った折りにはまさに、行きは『雲の上に向かって上っていく』という感じだし、特に帰りは『下界へ降りていく』というおもいだった。そしてこの標高差を利用したというか、標高差を伴う最長コースというのも特徴である。表の中でこの2つのスキー場よりも最長コースが長いのは東部のキリントンと中北部のジャクソンホールだけである。キリントンの場合、初級・中級スキーヤーには大変楽しいコースではあるが、網の目のように広がるコースの中から初心者用のコースで山頂からゴンドラベースまでを結ぶルートを確保した結果この距離がでたという感じが否めない。ジャクソンホールも迂回路の長さがものをいっているという感じがする。ところがホイスラー・ブラックコムの場合、一部には他のトレイルとの合流はあるものの、基本的には独立したコースであり、山頂付近の万年雪をいただく大きなボウルをスタートし、標高差を文字どおり身をもって体験しながら、延々と、まさに延々と滑り続けるというコースなのである。
景色の雄大さも特筆に値する。ロッキー山脈をはじめとして北アメリカ大陸には幾つかの山系があり、それぞれにある各スキー場とも素晴らしい景色をもっているのは言うまでもない。時にはそれが優美な美しさになったり、水の色をたたえる透明感であったり、広さ、高さあるいは深さであったりする。このウィスラー・ブラックコムの場合は『雄々しさ』を強く印象づけられる。切り立った崖、万年雪をいただく巨大なボウル、目の前に立ちはだかる"Parmanent Closed Area"、眼前に連なる険しい峰そしてまた峰・・・このスケールの大きさもまた他の追随を許さぬものである。
ホイッスラーマウンテンはホイッスラーヴィレッジの中心をなす広場の南東部に位置するウィスラーマウンテンゴンドラベースと山の向こう側に位置するウィスラークリークベースの2つのゲートがある。2つのゲートは共にウィスラーマウンテンの頂上から見ると肩口に当たる場に位置するラウンドパイクロッジを頂点とする北側と南側の斜面を形成し、前者はゴンドラ1基とリフト4基が、後者はリフト3基が設置されている。そしてこのラウンドパイクロッジの奥に頂上がそびえ、頂上に向かって左からシンフォニーボウル、ハーモニーボウル、グラシアーボウル、ホイッスラーボウル、ウェストボウルが頂上を取り囲むように連なる。おおざっぱに言うと、頂上付近のボウル群、ゴンドラ下に展開する斜面、そして感じとしてはその裏側に広がるホッスラークリーク側斜面の3つに区分できる。
一方のブラックコムマウンテンは基本的にはブラックコムベースがゲートになるが、ここがヴィレッジからやや離れたところに位置するため、ホイッスラーヴィレッジにも連絡用リフト乗り場がある。山の構造としてはベースから頂上に対する肩口にあたるレンディズツヴァウスロッジの間に広がる斜面が下部構造と、レンディズツヴァウスロッジから頂上まで尾根状のラインの南側セブンスヘーブンのエリア、北側のホーストマンボウル・ブラックコムボウルのエリア、そして頂上の向こう側に広がる巨大なブラックコムグラシアーの3つの部分が上部構造がある。
コースを選べばボウルは中級者にも十分楽しめる。ただし間違ってダブルブラックダイアモンドのコースに入ったり、中級者コースに隣接する崖につっこんだりしないように注意が必要である。『人が滑っていったから大丈夫だろう』などと他力本願的な、あるいは希望的観測でこれから自分が滑ろうとしているコースを評価するととんでもない目に遭う。おすすめは頂上から左に向かった後ベースロッジに向かってすべりおりる格好になるバーンストゥートレイルや、頂上から一旦山の裏側に回った後、迂回するような格好で滑り降りてくるハイウェイ86である。コースの長さ、標高差を十分に堪能できる。日本から来たスキーヤーによっては「長すぎていやになってしまいました」とか「あまりの規模の大きさに圧倒されて疲れ切ってしまい滑れなくなってしまった」といった言葉も聞かれた。極端な物言いかもしれないが、技量よりもガッツがものをいうコースである。
初級者にはゴンドラ乗り場付近、あるいはもう一つのベースロッジである、ウィスラークリークベースエリアはもちろんのこと、ゴンドラの途中駅であるオリンピックステーション付近にもスロースキーイングエリアが設定されている。今一つレッドラインエキスプレスリフトを利用する形でパイカズラウンドハウスとレイヴェンズネストハウスの間に初心者コースとスロースキーイングエリアが設定されているので山頂付近の雄大なボウルを見ながらスキーを楽しむことができる。
一方のブラコムマウンテン。上級・中級斜面が混在する上部の3つのパートがそれぞれにおもしろい。まずはウィスラー側に展開するセブンスヘーブンエキスプレスリフトの周辺に展開するエリア。斜度的には中級斜度が多く、一部は山道コース的に初級者用コースも設定されている。滑り出しの最初の三分の二は全面が雪におおわれているが最後の三分の一は森の中に入り各コースに別れる。一部に強烈なコブ斜面が待ちかまえていることがあり、上級者コースの標識のコースは注意が必要である。このパートはユタ州にあるスノーバードスキー場の頂上から見たリトルクラウドリフト周辺の雰囲気に似たものがあり、一瞬ながらどちらにいるのかわからなくなった感覚をもったのを憶えている。風に吹きすさばれて、あるいは眼前にそびえる頂上下の切り立った崖からくる『荒涼感』といったものに類似性を感じたのかもしれない。このパートの後半にはかなり左右に行ったり来たりする迂回路が初心者コースとして設定されており、リフトは全てのレベルのスキーヤーが利用することになる。
グレイシアクリークロッジからグレイシアーエキスプレスそしてホーツマンティーバーあるいはショウケースティーバーを乗り継いだいわばブラコムマンテン上部の真ん中のエリア。『最初はよいよい、お後は大変』といった感じである。滑り出しは斜度もそれほどでもなく、広々としたコースを楽しんでいられるのだが、「ふっと」先が見えなくなった場所に立つといきなり崖下に転がり落ちるような思いをさせられる場所が、あるいはそういったコースの入り口があちこちに待ちかまえている。初級・中級者は常に見通しの良いコースを標識に従い楽しく滑りましょう。命しらずのあなたは岩と岩の間を、今立っている場所からストンッと落下するような急斜面を、とても斜面などと呼べるような代物ではない崖をすべるスリルを心ゆくまで満喫することができるでしょう。
前述のショウケースティーバーの降り場からやや登った峰の向こう側に広がるのがブラコムグレイシアーである。これがまた『でかい』。なにせ圧巻である。前方にどこまで続くのだろうかと思うほどボウル状のコースが広がる。中心をなすのはあくまでも中級者コースの斜度・環境である。「どこでもいいよ、好きなところを勝手に滑りな」とおもわず言い放ってしまいたくなるほどの広さである。そしてこのコースを滑り始めたらグレイシアーを抜けて延々と続く『楽しいお帰りコース』をひたすら滑ってほぼベースロッジ近くまで降りるしかないことに注意したい。
実は仲間内の話で恐縮だが、思い出深い事件があった。写真をご覧いただきたい。中央部に岩肌が露出した崖があり、その上にリフトの鉄柱らしきものが見えると思う。その鉄柱のの左側がブラッコムグラシアーの入り口であり、そこから広いボウル状のコースを楽しむためにスキーヤーは左手に向かって斜面を横切るように滑っていくのだが、その滑りはじめの部分の陰に注目していただきたい。入り口からすぐの所に強烈にしゃくれた、そしてその部分だけがものすごい斜度になっている、しかも最上部がお椀の縁のようにえん曲になった部分がある。とにかくお椀の縁のようになっているのでここにはまりこまないようにするにはその縁をグルッと迂回しなければならない。筆者ともう一人のスキーヤーが早々と縁を迂回して溝のこちら側で待っていると、ブーツのバックルをしめるのに手間取ったため遅れた連れの女性スキーヤーが、我々を待たせてしまって申し訳ないと思ったところへ、しかもたまたま霧がかかって視界が悪かったために(彼女の名誉の為に)、悪魔のごとく口をぽっかりと開けているようなこの溝(実はこのとき、最初の40度以上の急斜度の下にまるで畑のように岩が待ち受けていた)の存在に全く気がつかず、迂回しなければいけないトップの縁をそのまままっすぐに我々の方に滑ってきてしまったのである。「とまれ!きたらだめだ!!」と大声で叫んだが後の祭り。その哀れな女の子はわれわれの足下のほとんど直角以上の角度の斜面にスキーのトップを突き刺してしまい、気がつくと右腕は崖のような斜面にくっついているは、下手にもがこうものならまさにまっさかさまに転落してしまうといった状況に陥ってしまったのである。しかも時として霧がはれ、自分の足元のさらに下には岩がまるではりのむしろのように・・・。冗談抜きで見ている方は「カナダの葬式はどんな風にするのかな」などと馬鹿な考えが脳裏をよぎったのでした。「とにかく助け出さなくてはならない」といことで、スキーをはずし、ブーツのかかとで一歩一歩しっかりと足場を確保しながらそばまで降り、彼女の腕をつかんで引き上げようとするのだが、スキーのトップが完全に突き刺さってしまい、にっちもさっちも動かない。連れの男性も同様の体制を取ったがそれでもダメ。たまたま通りかかったアメリカ人の男性スキーヤーが騒ぎを聞きつけ手伝ってくれたから良かったものの、女性一人を引き上げるのに男3人がかりでやっと事なきを得たというまれにみる大事件だったのである。ただ急斜度というのであればさして問題ではない。一部、すり鉢状に斜面がかぶさってきているのがことをこんなに大きくしたと言える。ちなみにこの女性スキーヤー。これほど痛い目にあったにもかかわらず、「今度行ったときには必ずその場所を滑りきってやる」と鼻息荒くかまえている。海外のスキー場を滑ろうというスキーヤーたるもの、このくらいのガッツは必要なのかもしれない。
ここ数年、アメリカ国内のスキー雑誌各誌が毎年行うベストリゾート特集でのランキングでウィスラーリゾートがものすごい勢いで順位を上げてきたことを書き添える必要があるだろう。トップ50の中頃に位置していたものが雑誌によっては総合第2位にまでのぼりつめ、その特集号の表紙には「今までだれも予想だにしなかったリゾート」という副題までついた。その急成長ぶりがうかがえる現象である。