第1号 95年夏号


注)このページは1995年春に作成、会員に郵送された会報をホームページ用に編集し掲載したものである。

Whistler Blackomb ミ British Columbia, Canada

スキーインストラクター 山田 健

 色とりどりの美しい色のプリント柄のスキーウェアーとアクセサリーで頭の先から足下まで見事にコーディネートされた実に華やかなスキーヤーの群。向こうにはラーメン、こっちには寿司、リフト乗り場のそばには鉄板焼の看板もあった。ウィスラーヴィレッジのゴンドラステーション付近の広場で目の当たりにした光景である。日本国内で非常に人気のあるスポーツであるスキー。信州を中心とした地域へのバス・自動車を利用したスキー旅行に始まり、北海道へのスキーパック旅行、そしてここ数年は海外へのスキー旅行へと距離1つがこのウィスラー・ブラックコムスキー場である。多くの日本人スキーヤーが訪れることで展開されるサービス。あるいは日本からの大小の資本によって行われるビジネス。年齢制限・期間制限はあるが一定期間日本人に就労を認めるビザ(ワーキングホリデー)を手にした日本人従業員の進出。こういった特殊な事情により、ウィスラー・ブラックコムスキー場は北アメリカにある他のスキー場とはひと味も、ふた味も違った趣を呈している。

 たとえばスキーレンタル。申し込み用紙は英語と日本語の2種類が並ぶ。そしてレンタル用の道具は新品のように手入れが行き届いた、しかも今年の最新モデル。このくだり、不思議に思われる方も多いとおもうが、アメリカという所、スキーの道具に限らずゴルフにしても他のスポーツにしてもレンタルの道具はひどい状態のものが多い。上級・エキスパート用のハイパフォーマンススキーならともかく、特に初級・中級者用の道具となると管理が非常にずさんでとてもお金を出して借りられるものではないことが多い。しかしそこに日本のサービス精神というか商売精神が入ることによって見違えるほど素晴らしいレンタル環境が整備されたと言える。

 

 ウィスラーヴィレッジのベースロッジの地下にはスキーレンタルショップと並んでZZスキーツアー、YYの旅といった日本の各旅行会社のツアーデスクが所狭しと並ぶのもこのスキー場ならではの光景である。その数、そして設置面積をみるとまさに”占領”しているという感じは拭えない。驚きを通り越してあきれる思いがすしるし本当にいいのかな、とおもわず考えてしまう。

 山のてっぺんでも驚かされた。リフトを降りてトレイルマップを片手に、おもしろそうなコースを物色し、そこがオープンしているかどうかを確かめようと近くにいたスキーパトロールに質問を発すると、「Yes, But very very KYU」、そして「very very ABUNAI」という答え。『カナダ人の英語発音はわからん』と思いつつ再度言ってくれるように頼んでやっと「はいオープンしてます。しかし大変急斜面です。」「大変危ないです。」の意味であることがわかり、おもわず隣にいた友人と顔を見合わせる一幕もあった。ことここにいたってとどめを刺されたというところか。

 筆者はお目にかかりませんでしたが、ウィスラースキー場、ブラックコムスキー場共にスキースクールには日本人のインストラクターがいるとのこと。右を見ても左を見ても日本人と日本語の世界といった感がある。

 さてスキー場。アメリカ合衆国と国境を接するカナダ太平洋岸のブリティッシュコロンビア州、その第1の経済都市バンクーバーから車で北へ約2時間のところに位置する。氷河によってつくられたフィヨルドの水の美しさを楽しむ内にいつのまにか標高が上がり、カナディアンロッキーの雄大な自然の中に2つのスキー場を仰ぎ見ることになる。

 ウィスラー・ブラックコムと呼びならわされているため混乱する向きもあるが、ウィスラー村にあるウィスラーマウンテンスキー場とブラックコムマウンテンスキー場というのが正確なところ。この2つのスキー場は別々の経営で、トレイルマップもそれぞれ独自のものがある。しかしスキーヤーの便宜を図り、別々のリフトチケットあるいは共通リフトチケットを買うことが可能で、相互のベースロッジへの行き来が可能である。ウィスラーヴィレッジを中心に、右に向かってホイスラーマウンテンが、左に向かってブラックコムマウンテンがそびえ立つ。

 共通した大きな特徴は山の頂上とベースロッジの間の標高差の大きさである。次の表を見ていただきたい。

(標高は単位フィート、最長は最長コース:単位マイル)

スキー場

山頂

ベース

標高差

最長コース

ハンター NY

3200

1600

1600

2.0

キリントン VT

4220

1060

3160

10.2

ヴェイル CO

11250

8150

3100

4.0

スノーバード UT

11000

7900

3100

3.3

ジャクソンホール WY

10450

6311

4139

7.0

スコーバレー CA

8900

6200

2700

3.0

ブラッコム BC

7494

2140

5280

5.0

ウィスラー BC

7140

2214

5006

5.0

北アメリカ大陸を東から西までをカバーするように各州から1つずつ登場してもらった。山頂の標高だけをとるならばいわゆるコロラドロッキーと呼ばれるワイオミング、コロラド、ユタの各州にあるスキー場がダントツである。ところがこのあたりのスキー場はベースロッジの標高も同様に高く、山頂とベースの間の標高差(Vertical Drop) はそれほど大きなものにはならない。ところがウィスラー・ブラックコムの2つスキー場になると山頂の標高はそれほどでもないが、標高差には他の追随を許さないものがある。筆者が滑った折りはいずれも曇りの日が多かったのだが、ウィスラー側のゴンドラに乗った折りにはまさに、行きは『雲の上に向かって上っていく』という感じだし、特に帰りは『下界へ降りていく』というおもいだった。そしてこの標高差を利用したというか、標高差を伴う最長コースというのも特徴である。表の中でこの2つのスキー場よりも最長コースが長いのは東部のキリントンと中北部のジャクソンホールだけである。キリントンの場合、初級・中級スキーヤーには大変楽しいコースではあるが、網の目のように広がるコースの中から初心者用のコースで山頂からゴンドラベースまでを結ぶルートを確保した結果この距離がでたという感じが否めない。ジャクソンホールも迂回路の長さがものをいっているという感じがする。ところがホイスラー・ブラックコムの場合、一部には他のトレイルとの合流はあるものの、基本的には独自のコースであり、山頂付近の万年雪をいただく大きなボウルをスタートし、標高差を文字どおり身をもって体験しながら、延々と、まさに延々と滑り続けるというコースなのである。

 景色の雄大さも特筆に値する。ロッキー山脈をはじめとして北アメリカ大陸には幾つかの山系があり、それぞれにある各スキー場とも素晴らしい景色をもっているのは言うまでもない。時にはそれが優美な美しさになったり、水の色をたたえる透明感であったり、広さ、高さあるいは深さであったりする。このウィスラー・ブラックコムの場合は『雄々しさ』を強く印象づけられる。切り立った崖、万年雪をいただく巨大なボウル、目の前に立ちはだかる”Parmanent Closed Area”、眼前に連なる険しい峰そしてまた峰・・・このスケールの大きさもまた他の追随を許さぬものである。

 ホイッスラーマウンテンはホイッスラーヴィレッジの中心をなす広場の南東部に位置するウィスラーマンテンゴンドラベースと山の向こう側に位置するウィスラークリークベースの2つのゲートがある。2つのゲートは共にウィスラーマウンテンの頂上から見ると肩口に当たる場に位置するラウンドパイクロッジを頂点とする北側と南側の斜面を形成し、前者はゴンドラ1基とリフト4基が、後者はリフト3基が設置されている。そしてこのラウンドパイクロッジの奥に頂上がそびえ、頂上に向かって左からシンフォニーボウル、ハーモニーボウル、グラシアーボウル、ホイッスラーボウル、ウェストボウルが頂上を取り囲むように連なる。おおざっぱに言うと、頂上付近のボウル群、ゴンドラ下に展開する斜面、そして感じとしてはその裏側に広がるホッスラークリーク側斜面の3つに区分できる。

 一方のブラックコムマウンテンは基本的にはブラックコムベースがゲートになるが、ここがヴィレッジからやや離れたところに位置するため、ホイッスラーヴィレッジにも連絡用リフト乗り場がある。山の構造としてはベースから頂上に対する肩口にあたるレンディズツヴァウスロッジの間に広がる斜面が下部構造と、レンディズツヴァウスロッジから頂上まで尾根状のラインの南側セブンスヘーブンのエリア、北側のホーストマンボウル・ブラックコムボウルのエリア、そして頂上の向こう側に広がる巨大なブラックコムグラシアーの3つの部分が上部構造がある。

 やはり雄大な氷河をいただく山頂付近のボウルを抜きにしては目玉のコースは語れない。ウィスラーマウンテンのゴンドラの終着点、あるいはラウンドハウスロッジから頂上を見上げたときに広がる一連のボウル、そしてブラッコムマウンテンのブラッコムグレーシアーと呼ばれる巨大なボウルはただただその大きさ、迫力に圧倒されるばかりである。多くを語る必要はない。ただただ、ひたすら滑るのみである。

 ここ数年、アメリカ国内のスキー雑誌各誌が毎年行うベストリゾート特集でのランキングでウィスラーリゾートがものすごい勢いで順位を上げてきたことを書き添える必要があるだろう。トップ50の中頃に位置していたものが雑誌によっては総合第2位にまでのぼりつめ、その特集号の表紙には「今までだれも予想だにしなかったリゾート」という副題までついた。その急成長ぶりがうかがえる現象である。

       (US Frontline News 1994年10月号に掲載された原稿に筆者が加筆したもの)


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